出版社:集英社
刊行年:2003.2.26
定 価:1,400円(税別)
ISBN:4087746194
四六版 260p
装 丁:妹尾浩也(iwor)


『リアルワールド』
夏休みのある日、高三の十四子は、何かが割れる鋭い音を耳にした。隣家の同い年の少年ミミズが自分の母親をバットで殴り殺した瞬間の音だった。それを知らずに外出した十四子は、犯行直後のミミズと出会い、自転車と携帯を盗まれてしまう。ミミズは十四子の携帯にある友人たちに電話をし、母親殺しを喋った。同じく母を亡くしたユウザンはミミズに興味を持ち、その逃走に手を貸す。男友達との虚しい付き合いを繰り返すキラリンはミミズと同行する。一人、冷静なテラウチは三人の行動が許せない。

作者のコメント
 『リアルワールド』は、17歳の少女4人と、母殺しの少年の物語です。少女のうち、ある者は少年の逃走を助け、ある者は少年と同行し、またある者は傍観する。最後に、少年より遙かに大きな心の空洞を抱えた少女が、少年の居場所を密告して、彼らは皆、一気に大きな悲劇に向かうのです。
 小説をひと言で表すのは難しいのですが、こういうことだと思います。即ち、現実という「リアル」に浸食される魂の物語ではないか、と。感情、想像力、信じるもの。自分の内部にある自分だけの世界、それこそがリアルワールドであるべきなのに、そして「現実」を凌駕すべきものなのに、「現実」は逆にその豊かで柔らかな世界を浸食していくのです。『リアルワールド』は、その戦争に敗れた少年と少女たちの悲しい物語です。
 表紙カバー絵について説明しておきますと、これはヘンリー・ダーガーというアメリカの人の、「The Sacred Heart of Jesus」という有名な絵です。ダーガーは職業画家ではありません。彼は13歳で精神遅滞と判断されて施設に入れられ、病院の皿洗いをしながら、孤独に生きた人でした。死後、彼の部屋から『非現実の王国で』という小説と、多数の水彩画が発見されたのです。絵は水彩で画用紙の両面に描かれ、狭い部屋ゆえに絵巻物のように丸められていたそうです。ダーガーの絵には、ペニスが付いた少女たちが描かれているので有名です。ダーガーが、生涯女性の裸を見たことがなかったために知らなかったとも言われています。
 私はこの小説の連載を始める時、ダーガーの『非現実の王国で』という物語のタイトルを見て、リアルワールドと同じだ、と非常に衝撃を受けたことを覚えております。それでカバーにダーガーの絵を使いたいと思い付きました。それもちょうど展覧会の開催中という絶好のタイミングを得て。これも何かの縁だと思います。
(インタビュー・構成 ミッシー鈴木)