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『水の眠り 灰の夢』 |
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昭和38年、東京オリンピック前夜の東京。 週刊誌記者の村野善三は、草加次郎事件を追ううちに、少女殺害の疑いをかけられる。ミロの父、村野善三の青春、その光と影。ミロの出生の秘密も明らかに。 ミロ・シリーズ番外編。 |
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作者のコメント |
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ミロの父親、村野善三を書こうと思ったのは、村善が好きという声を聞いたせいでしょう。どうもミロが好きという声は、男性読者からはほとんど聞けませんでしたね。どうしてでしょう(笑)。村善の青春時代は昭和三十年代。ちょうど、私が東京に引っ越して来る前のことです。もともと高度経済成長時代に入る直前の東京とその頃の風俗にとても興味がありました。でも、大変だったのは資料集め。特に欲しかったのは写真資料でした。「メンズクラブ」の編集部に行き、「街のアイビーリーガーズ」という写真ページをコピーさせて貰ったり、当時の車雑誌を車の図書館まで探しに行ったり、映画を見たり、と走り回っていました。 でも、一番役に立ったのは、梶山季之さんの小説です。週刊誌創成期の頃の話でしたから、興味深かったです。べらんめえで喋る遠山軍団のボス、江戸っ子の遠山良巳のモデルは、梶山季之さんと青島幸男さんです。ミロの本当の父親、後藤伸朗のイメージは、梶山季之さんのライバルだった草柳大蔵さん。 アイビールックが流行った頃で、男の人が大衆的にかっこ良くなった時期でした。大橋歩さんの平凡パンチの表紙絵を眺めたりしていると、私の子供時代を思い出したりして楽しかったです。小説自体は、今思うと少し窮屈ですね。何と言っても犯人探しだからでしょう。それも、当時の大事件「草加次郎」は誰か、ということなのですから縛りが多過ぎて、私としては不自由でした。 ミロの父親は村善ではなかったという真実が語られますが、それは副産物です。書き始めた頃はそんなことを思ってはいませんでした。ただ何となく、ミロが村善と早重の子供だったらつまらないなと思っていました。途中で後藤の子供にしようと考えてからは、年代合わせであちこち調整する羽目になりました。 (インタビュー・構成 ミッシー鈴木) |