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『顔に降りかかる雨』 |
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友が大金を持って失踪した。親友の恋人、成瀬を信じていいのか。愛情と裏切りの間で足掻く村野ミロ。 「ミロ・シリーズ」はここから始まった。 江戸川乱歩賞受賞作品。 |
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作者のコメント |
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江戸川乱歩賞に応募しようと思って書いた作品です。当時は、ジュニア小説を書いていましたが、どんなに長くても400枚前後。私自身は長編向きだと思っていたのですが、それでも550枚を超えて書くのは初めてでした。
最初は不安でしたから、「箱書き」といいますか、小見出しをつけた章立てをしてきっちりと書いたんです。つまり、書く内容をあらかじめ想定して始めたのですが、中盤から自由になり、むしろ紙数が足りない、もっと書きたいとさえ思いました。書き抜くことで自信を得た作品です。 女流ハードボイルドと言われていますが、そういう意気込みというよりは、村野ミロという32歳の女の生活や仕事、人間関係を書きたかったのです。たまたまミステリーの3F時代と言われた幸運な時期に当たったせいで、村野ミロという女性探偵のシリーズとして注目され、選ばれたのではないかと思います。 主人公ミロが、親友を殺した男とベッドインするところ(実際は果たしていないのですが)。この箇所をあれこれ言われた記憶があります。私としては、欧米のハードボイルド小説に散見されるような、探偵の男が、依頼人であり、かつ真犯人でもある女と関係を持つ、というパターンをやってみたかっただけなのですが。つまり、男なら許されても女なら駄目、という読者の側の倫理があるのだと知っただけでも収穫でした。また、この作品で、私は村野ミロ、イコール桐野夏生のイメージも獲得(?)したらしく、このイメージを払拭したいという戦いが新たに始まったのだとも言えます。 (インタビュー・構成 ミッシー鈴木) |
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第39回 江戸川乱歩賞受賞 |